カッティングシートで、衝突防止ラインを作る方法

デザイン小ネタ

衝突防止ライン、または、セーフティーラインという言葉をご存知でしょうか?

玄関周りが総ガラス貼りになっているお店には、かならずといっていいほどカッティングシートが貼ってあります。

きれいに磨かれたガラスに、人や物が激突しないための安全対策です。

ウインドウガラス
  • 自作してガラスに貼ってみたい
  • 業者がどうやってカッティングシートを作成しているのか知りたい

という方向けに解説したいと思います。

★カッティングシートとは
「カッティングシート」という名称は、株式会社中川ケミカルの商品名です。
わかりやすいように表記していますが、業界の総称はマーキングフィルムと呼びます。
この記事内で使用したのは3M™ スコッチカル™ フィルム XLシリーズマーキングフィルムです。
マーキングフィルムマニアにはたまらない名品。

シンプルだけど難易度高い衝突防止ライン

3色の細いラインを等間隔で並べたデザインを作ってみます。
完成図はこちら↓

カッティングシートのデザイン

カッティングシートはカッティングマシンで切りますが、後は手作業なので、根気がいります。

★カッティングマシンとは
大型プリンターのような形をしています。
インクが出る部分に、インクの代わりに、極小のカッター刃がついています。
コンピュータからデータを送ると、カッターの刃がシートの上を走り、薄いシート表面をカットしていきます。
軽い力で走らせるので、剥離紙は切れません。

まず、普通に3本のラインをカットします。
青のシートで作っていますが、どの色で作ってもOKです。

カッティングシートのデザイン


真ん中と、下のラインを台紙からはがします。イラストでは指ですが、カッターの刃先でシートの角をめくります。はがした細いシートは捨てます。

カッティングシートのデザイン

色が違うシートをカットする

続いて、グリーンのシートでラインをカットし、台紙からはがします。

ここからは繊細な作業になります。
両端を持ち、真ん中のあいた所に貼り付けます。
静電気でへんなとこにくっつきやすいの注意です。

カッティングシートのデザイン
カッティングシートのデザイン

シートの平行を保ちながら、台紙のあいた部分の角に合わせてやさしく乗せます。

反対側の端まで、ゆがまないよう軽く指で押さえていきます。

メーカーごとにシートの特性が異なる

3M™ スコッチカル™シリーズを使いましたが、シートの特性を考慮しながら作業していきます。

  • シートが薄くて、ひっぱると伸びるので、軽く指に載せる感じで移動させる。
  • 違うところにくっつけてしまうと、粘着力が強いので、はがすときに伸びる。
  • ツルツルの台紙に貼る時でさえ、少しの引っ張りで伸びる
  • 伸びたらあきらめて最後にカッターで切る場合もあるが、あとでちょっと縮むので、切りすぎ注意。

メーカーによっては、シートが固めで、全然伸びない物もあります。

伸縮性があるシートの扱い方

とにかく「伸び」との戦い。
暑いと、さらに伸びる。夏は冷房がきいた室内で作業し、冬は暖房を強くしすぎないこと。

どうして、そんなに伸びる素材なの?と思うかもしれませんが、薄くてやわらかいシートは、温度差に対する耐久性や、湾曲した物体に対してフィットします。

もう一色も同じ作業を繰り返す

同様に、オレンジのシートでラインをカットし、台紙からはがします。両端を持ち、下の段のあいた所に貼り付けます。

カッティングシートのデザイン

3本ラインができたら、ライン以外の不要な部分をはがして捨てます。

カッティングシートのデザイン

不要な部分を捨てて、使いたい部分だけ台紙に残したイメージです。

カッティングシートのデザイン

リタックシートを上から貼って、バラバラにならないようにします。

★リタックシートとは
弱粘着の透明フィルムや、和紙でできています。
文字や複雑な図形などのレイアウトを、崩さずきれいに転写することができます。 
ガラス面などに貼り付けた後、リタックシートは剥がして捨てます。
和紙リタックは、安価で鉛筆で書き込みができるので、私は和紙のほうが好きです。
リタック同士がくっついて、クチャクチャになると、やりなおしです。
一番神経を使う作業です。

実はカッティングシート以外でも作れる

別の方法として、「ガラス用透明シート」に有機溶剤インクジェット印刷する方法があります。

溶剤インクは耐候性、耐水性に優れており、カッティングシートにくらべて強度があります。

カッティングシートは素人でも爪で剥がせるという難点があります。
耐候性の溶剤インク印刷用のシートは厚みと粘着力が強いので、道具なしではちょっと剥がしにくい。

シート裏のノリ部分の色も注目

実際に施工完了すると、下図のようなウインドウ全面をぐるっと囲んだデザインになります。

大きなビルだったので、シートをカットして、はがし、乗せる、はがし、乗せるの作業を繰り返して100m分くらい作りました。

ガラス面に貼る場合は、室内、室外両方から見るので、ノリ部分がシートと同色になっているものが望ましいです。

3M™ スコッチカル™ フィルムのXLシリーズ中でも、表は着色でもノリ部分が白のものが混在しています。

3色のラインも逆側からみたら、ただの白線になってしまいますので、両面同色のシートを選びましょう。

また、品番にMとついているものはマット(つや消し)なので、複数シートを使う場合は、「つや感」を統一したほうが仕上がりが綺麗です。

カッティングシートを発注するときのポイント

業者にとってはなじみのある用語ですが、一般のお客様はカッティングシートと出力シート(インクジェット出力シート、塩ビメディア)の違いを理解されていない方も多いので、ざっくり説明します。

  • カッティングシート
    最初から色がついたシートを切り抜いて作成。
    文字や1色〜3色くらいのデータに向いている。
    金色、銀色、蛍光色、木目調、すりガラス調など、特殊なシートが多数ある。
     
  • 出力シート
    無色のシートに図柄を印刷して、不要部分を切り落として作成。
    多色グラデーションも可能。
    複雑な図柄に向いているが、金色のような特殊色は印刷できない。(プリンターの種類による)

窓にカッティングシートを貼りたい

上記のようなご依頼があった場合、図柄によっては作業員の人数と工程が増えます

人数が増えるごとに、費用が上がります。

施工方法がよくわからない場合は「カッティングシート」と指定しないほうが良いです。

希望の図柄を見せて、施工方法はおまかせしましょう。

印刷のほうが早くて安価でできる場合は、そのむね提案されると思います。

シートを購入して自分で貼りたい

簡単そうに見えますが、窓ガラスいっぱいくらいのサイズになると、素人には難易度が高いです。

シートがヘナヘナしているので、貼る時にシワが寄ったり、気泡でブツブツになったりしますので、2人以上で施工してください。

窓ガラス用のシートは、初期費用はかかりますが、一度貼ってしまえば5年以上持ちます。
メンテナンスも不要です。
ラインだけでなく、ロゴやイラストを入れることも可能ですので、玄関周りの雰囲気を変えたい時にもおススメです。
デザインが決まらない時は、お気軽にご相談ください。

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